ベント型ラジアルGPアンテナの実験

 

1.製作のねらい

HFハイバンドにQRVするため、アンテナを作ることにしました。

敷地面積の都合から垂直系のGPアンテナを考えたのですが、HF帯ですと

ラジアルを張るスペ−スをとることも難しい狭さです。そこで、ラジアルが

自宅の敷地をはみ出さない工夫が必要になりました。ラジアルを短縮するに

は、ロ−ディングコイル等を用いることも考えられますが、短縮型ではなく

く、ベント型のラジアルを試みてみました。

 

  結果は、ラジアルを曲げるとSWRの低い帯域が狭くなりましたが、ワ−ク

バンドには十分で、21MHzや28MHzでも、運用モ−ドに応じた共振

周波数に調整すれば、それなりに楽しめる結果が得られました。モノバンド

型、多バンド型、色々な実験をしましたので紹介します。

 

2.アンテナの概要

  基本となるモノバンド型の構造は通常の1/4波長GPで、ラジアルは1本

です。1/4波長のワイヤをスパイダ−コイル状に、中心から外側に向かっ

て張っています。ラジアルの固定方法は、1m長の木の棒を2本クロスにし

て、これに適当な間隔に穴をあけ、ラジアルとなるワイヤを通して行きまし

た。できるだけ1辺の長さが長くなるように大きな直径で巻く程、より帯域

が広くとれますので、敷地が許す範囲で長い棒を用いる方がベタ−です。

 

多バンド型は各バンド毎に、放射エレメントとラジアルを用意しますが、多

バンド型の放射エレメントはアルミパイプを複数本用いるのではなく、1本

のアルミパイプにワイヤを沿わせた構造にしています。風でワイヤがふらつ

くと、SWRに影響が出ますので、電気的/機械的な安定性を高めるには、

アルミパイプ複数本で構成するのが良いです。

各バンドの共振周波数は、互いのエレメントやラジアルにかなり影響し合い

ますので、調整はバンド数が増える程難しくなります。尚、放射エレメント

とラジアルを張る木の棒は、共にエンビパイプに固定しました。

 

3.製作

(1) 給電部

1/4波長GPアンテナの給電点インピ−ダンスは30Ω程度ですので

、このアンテナのインピ−ダンスも50Ωより低くなることが予想でき

ました。21MHzのモノバンド型を製作して直接給電してみると、共

振点でSWRは2.0となりましたので、次の計算から、このアンテナ

の給電点インピ−ダンスは25Ωとなります。

              SWR=50/R    R:アンテナインピ−ダンス

              R=25

    よって、インピ−ダンス比2:1、巻き線比で10:7の変成器を用い

    て給電することにしました。トロイダルコアによるものですが、50W

の給電で特に問題はありませんでした。

(2) 放射エレメント

モノバンド型の放射エレメントはアルミパイプで作りました。多バンド

型の場合は、このアルミパイプに沿って、他のバンドの放射エレメント

となる被服付き電線を1本または2本張りました。中央のアルミパイプ

との間隔は、適当な板材をスペ−サとして使用し10cmとりました。

共振周波数の調整は、モノバンド型も多バンド型も、調整のし易さから

ラジアルの長さだけで調整することにしましたので、放射エレメント長

は計算値をそのまま使いました。短縮率は、アルミパイプを95%、被

服付き電線を96%としました。

  (3)ラジアル

        ラジアルはAWG24の被服付き電線です。電線は、前述の木の棒に5

   cm間隔に穴をあけ、内から外に向かって順次通して行きますが、直径

   を大きくとって、1辺の長さを長く巻いた方が帯域が広くとれます。

   また、この巻き方によってラジアルの長さも違ってきます。同じ共振周

   波数でも、直径が小さい程、ラジアルは1/4波長よりも長いものが必

   要になりました。

 

3.調整

  給電点のインピ−ダンスは先ほどの変成器で合わせますので、調整は共振

周波数だけになります。放射エレメントは前述の通り計算値をそのまま用

い、ラジアルの長さだけを調整することにしました。ラジアルは、予備実

験で、ベントすると1/4波長よりも長いものが必要であることがわかり

ましたので、1/4波長より長めの電線を巻いた後、ディップメ−タでお

およその長さに調整してから 、実際に送信してSWRが低くなるように

追い込んで行きました。

 

多バンド型の調整は、互いのラジアルの長さや間隔が、お互いの共振周波

数に影響し合いますので根気が必要です。1つのバンドのラジアルだけを

追い込んで行くのではなく、全バンドを一緒に徐々に追い込んで行きます。

 

5.使用結果

手元に比較するアンテナがありませんので、このアンテナの使用感だけの

話になりますが、各バンドとも国内QSOには不自由しません。

現在(2001.Aug)18MHzモノバンド型のアンテナを地上高8mに上

げて使用していますが、設置した日に、パイルの中でYJと10WのCW

でコンタクトすることができ、まずまず満足しています。もちろん、八木

等のビ−ムアンテナと対抗できるものではありませんが、HFハイバンド

がそれなりに楽しめます。同じようなコンセプトのアンテナである市販の

短縮型GPでは、ラジアルだけでなく、放射エレメントも短縮されている

ものがありますが、こちらの放射エレメントはフルサイズなので、帯域の

点では有利です。定量的な比較はしてませんが、おそらくゲインもそうだ

と思います。なによりも、質量/寸法的に、VHFの多段型GPアンテナ

を扱う感覚で、手軽に設置できる点がメリットです。

                                                               おわり